ルシャトリエの原理
ルシャトリエの原理(ルシャトリエの法則、平衡移動の原理)とは、平衡状態にある系の条件を変えると、その変化をやわらげる向きに平衡が移動するという原理です。
原理の内容
- (1) ルシャトリエの原理とは、平衡状態にある系に濃度・圧力・温度の変化を加えると、その変化を打ち消す(やわらげる)方向へ平衡が移動して、新しい平衡状態になるという原理である。OpenStax「Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle」
条件ごとの平衡の移動
| 変化 | 平衡が移動する向き |
|---|---|
| ある物質の濃度を増やす | その物質が減る向き(消費される向き) |
| ある物質の濃度を減らす | その物質が増える向き(生成される向き) |
| 圧力を高くする(体積を小さくする) | 気体の分子数(係数の合計)が減る向き |
| 圧力を低くする(体積を大きくする) | 気体の分子数が増える向き |
| 温度を上げる | 吸熱の向き |
| 温度を下げる | 発熱の向き |
| 触媒を加える | 移動しない(速さが変わるだけ) |
| 反応に無関係な気体を一定体積で加える | 移動しない |
- (2) ある物質の濃度を増やすと、その物質を消費する向きへ平衡が移動する。逆に取り除けば、その物質を生成する向きへ移動する。OpenStax「Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle」
- (3) 圧力を高くすると、気体の分子数(係数の合計)が減る向きへ平衡が移動する。両辺の気体の分子数が同じ反応では、圧力を変えても平衡は移動しない。OpenStax「Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle」
- (4) 温度を上げると吸熱の向き、下げると発熱の向きへ平衡が移動する。温度変化だけが平衡定数そのものを変える。OpenStax「Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle」
- (5) 触媒は正反応・逆反応の速さを同じ割合で大きくするため、平衡を移動させない。平衡に達する時間を短くするだけである。OpenStax「Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle」
具体例:アンモニアの合成
N₂(気) + 3H₂(気) ⇄ 2NH₃(気) + 92kJ(発熱反応)
| 操作 | 結果 |
|---|---|
| 圧力を高くする | 左辺4分子 → 右辺2分子なので右へ移動し、NH₃が増える |
| 温度を下げる | 発熱の向き(右)へ移動し、NH₃が増える |
| 温度を上げる | 吸熱の向き(左)へ移動し、NH₃が減る |
| NH₃を取り除く | NH₃を生成する向き(右)へ移動する |
- (6) アンモニア合成 N₂ + 3H₂ ⇄ 2NH₃ + 92kJ では、高圧・低温ほど平衡は右(NH₃側)へ寄る。ただし低温では反応速度が小さくなるため、実際には触媒を用いて適度な高温で行う。OpenStax「Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle」
危険物との関係
- (7) 密閉容器内の液体と蒸気の平衡も、温度を上げると蒸発(吸熱)の向きへ移動して蒸気圧が高くなる。夏場に容器内圧が上がるのはこのためで、通気管や安全装置が必要になる。OpenStax「Phase Transitions」
- (8) 気体の溶解も平衡であり、温度を上げると溶解度が下がり、圧力を上げると溶解度が上がる(ヘンリーの法則)。OpenStax「Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle」
試験での頻出ポイント
- 「加えた変化をやわらげる向きへ移動する」が原理の核心です。
- 圧力は「気体の分子数が減る向き」。両辺の気体分子数が等しければ移動しません。
- 温度を上げると吸熱の向き。発熱反応では生成物が減ります。
- 触媒では平衡は移動しません。これが最頻出のひっかけです。
- 一定体積で無関係な気体(アルゴンなど)を加えても、各成分の分圧が変わらないため平衡は移動しません。
出典・参考
- OpenStax Shifting Equilibria: Le Châtelier's Principle
- OpenStax Chemical Equilibria