熱化学
化学反応では熱の出入りがあり、その量を反応熱またはエンタルピー変化として扱います。危険物取扱者試験では、発熱・吸熱の判別、燃焼熱と生成熱、反応式の係数、ヘスの法則を組み合わせた計算が出題されます。
基本事項
- (1) 発熱反応は周囲へ熱を放出する反応で、反応系のエンタルピー変化ΔHは負になる。OpenStax「exothermic process」
- (2) 吸熱反応は周囲から熱を吸収する反応で、反応系のエンタルピー変化ΔHは正になる。OpenStax「endothermic process」
- (3) 燃焼熱は、物質1molが完全燃焼するときに放出する熱量として扱う。放出熱量を正の大きさで表す慣用と、エンタルピー変化を負号付きで表す方法を区別する。OpenStax「standard enthalpy of combustion」
- (4) 生成熱は、単体から化合物1molが生成するときに出入りする熱量として扱う。発熱生成なら、放出熱量は正の大きさ、生成エンタルピーΔHは負号付きで表される。OpenStax「standard enthalpy of formation」
- (5) 熱化学方程式では、反応式の係数が表す物質量とΔHが対応する。反応式をn倍するとΔHもn倍になり、反応を逆向きにするとΔHの符号が逆になる。OpenStax「thermochemical equations」
- (6) 反応熱は反応の経路によらず、反応前後の状態だけで決まる。複数の熱化学方程式を加減して目的の反応式を作り、そのΔHも同じように加減できる。これをヘスの法則という。OpenStax「Hess's law」
- (7) 同じ反応条件では、反応する物質量と発生・吸収する熱量は比例する。1mol当たりの熱量がqなら、n molではnqとなる。OpenStax「反応量とΔH」
プロパンの生成熱の計算
水素、炭素、プロパンの燃焼熱をそれぞれ286kJ/mol、394kJ/mol、2219kJ/molとします。
- 3molの炭素が燃焼して放出する熱:3×394=1182kJ
- 4molの水素が燃焼して放出する熱:4×286=1144kJ
- 単体から直接、二酸化炭素3molと水4molになるときの放出熱:1182+1144=2326kJ
- いったんプロパンを生成してから燃焼するとき:プロパンの生成熱+2219kJ
ヘスの法則より、プロパンの生成熱は2326−2219=107kJ/molです。エンタルピー変化で書けば、3C+4H₂→C₃H₈ のΔHは−107kJ/molです。
ひっかけ
- 「放出した熱量の大きさ」と「ΔHの符号」を混同しない。
- 反応式を2倍・1/2倍したら熱量も同じ倍率にする。
- 反応式を逆向きにしたらΔHの符号を逆にする。
- ヘスの法則では、消去したい物質が反応式の左右で打ち消されるように式を加減する。
出典・参考
- 一般財団法人消防試験研究センター 乙種危険物取扱者試験・公開問題(燃焼熱からプロパンの生成熱を求める出題例)
- NIST Chemistry WebBook: Propane(プロパンの熱化学データ)
- NIST Chemistry WebBook: Methane(メタンの熱化学データ)