熱化学反応式
熱化学反応式(熱化学方程式)とは、化学反応式に反応熱を書き加えた式です。どれだけの物質が反応してどれだけの熱が出入りするかを、量の関係とともに表せます。
書き方の約束
- (1) 熱化学反応式では、化学反応式の右辺に反応熱を書き、両辺を等号(=)で結ぶ。係数は分数でもよく、着目する物質の係数を1にするのが原則である。OpenStax「Enthalpy」
- (2) 日本の慣行では、発熱反応の反応熱を正(+)、吸熱反応を負(−)として右辺に書く。国際的に用いられるエンタルピー変化 ΔH は符号が逆で、発熱反応が負(ΔH<0)である。符号の向きが逆になる点に注意する。OpenStax「Enthalpy」
- (3) 物質の状態(固体 s、液体 l、気体 g、水溶液 aq)を明記する。同じ反応でも生成する水が液体か気体かで反応熱が変わるためである。OpenStax「Enthalpy」
例:メタンの完全燃焼
CH₄(気) + 2O₂(気) = CO₂(気) + 2H₂O(液) + 891kJ
反応熱の種類
| 名称 | 定義 |
|---|---|
| 燃焼熱 | 物質1molが完全燃焼するときに発生する熱量 |
| 生成熱 | 化合物1molがその成分元素の単体から生成するときに発生・吸収する熱量 |
| 中和熱 | 酸と塩基が中和して水1molを生じるときに発生する熱量 |
| 溶解熱 | 物質1molを多量の溶媒に溶かすときに発生・吸収する熱量 |
| 融解熱・蒸発熱 | 物質1molが融解・蒸発するときに吸収する熱量 |
- (4) 反応熱には燃焼熱・生成熱・中和熱・溶解熱などがあり、いずれも着目する物質1molあたりの熱量として定義される。OpenStax「Enthalpy」
- (5) 燃焼熱は「物質1molが完全燃焼するときに発生する熱量」で、必ず発熱である。OpenStax「Enthalpy」
- (6) 強酸と強塩基の中和熱は、酸・塩基の種類によらずおよそ56kJ/molである。中和の本体が H⁺ + OH⁻ → H₂O という共通の反応だからである。OpenStax「Acid-Base Titrations」
- (7) 単体の生成熱は0と定める。この約束があるため、生成熱から反応熱を計算できる。OpenStax「Enthalpy」
反応熱の計算
- (8) 反応熱=(生成物の生成熱の総和)−(反応物の生成熱の総和)で求められる。引く順序を逆にすると符号が反対になる。OpenStax「Enthalpy」
計算例
一酸化炭素の燃焼 CO(気) + 1/2 O₂(気) = CO₂(気) + Q
CO₂の生成熱を394kJ/mol、COの生成熱を111kJ/mol、O₂(単体)の生成熱を0とすると、
Q = 394 −(111 + 0) = 283kJ です。
危険物との関係
- (9) 危険物の燃焼はいずれも発熱反応である。発熱量が大きいほど、また発熱速度が大きいほど火災の規模は大きくなる。総務省消防庁「危険物とは」
- (10) 発熱反応で生じた熱が逃げずに蓄積すると温度が上がり、反応がさらに加速して自然発火に至る。放熱条件(比表面積・積み方・通風)が発火の分かれ目になる。総務省消防庁「危険物とは」
試験での頻出ポイント
- 熱化学反応式は着目する物質の係数を1にし、係数に分数を使ってよいのが特徴です。
- 日本の慣行の反応熱(発熱が+)と、ΔH(発熱が−)は符号が逆です。
- 反応熱=生成物の生成熱の和 − 反応物の生成熱の和。順序を逆にしないこと。
- 単体の生成熱は0です。
- 強酸と強塩基の中和熱は種類によらず約56kJ/molです。
出典・参考
- OpenStax Enthalpy
- OpenStax Energy Basics
- 総務省消防庁 危険物とは