酸と塩基
酸と塩基は、危険物の性質・消火の理解に欠かせない基礎です。定義・強弱・pH の3点を押さえます。
定義
| 定義 | 酸 | 塩基 |
|---|---|---|
| アレニウスの定義 | 水に溶けて水素イオン H⁺ を生じる物質 | 水に溶けて水酸化物イオン OH⁻ を生じる物質 |
| ブレンステッド・ローリーの定義 | H⁺ を与えるもの(プロトン供与体) | H⁺ を受け取るもの(プロトン受容体) |
- (1) アレニウスの定義では、酸は水溶液中で水素イオン H⁺ を生じる物質、塩基は水酸化物イオン OH⁻ を生じる物質である。OpenStax「Brønsted-Lowry Acids and Bases」
- (2) ブレンステッド・ローリーの定義では、酸は H⁺ を与えるもの、塩基は H⁺ を受け取るものである。この定義なら水溶液以外の反応や、アンモニアのように OH⁻ をもたない塩基も説明できる。OpenStax「Brønsted-Lowry Acids and Bases」
- (3) 水は、相手によって酸としても塩基としてもはたらく両性の物質である。OpenStax「Brønsted-Lowry Acids and Bases」
価数と強弱
価数は1分子が出せる H⁺(または OH⁻)の数、強弱は水溶液中でどれだけ電離するか(電離度)です。価数と強弱は無関係です。
| 強酸・強塩基(電離度が大きい) | 弱酸・弱塩基(電離度が小さい) | |
|---|---|---|
| 酸 | 塩酸 HCl(1価)、硝酸 HNO₃(1価)、硫酸 H₂SO₄(2価) | 酢酸 CH₃COOH(1価)、炭酸 H₂CO₃(2価) |
| 塩基 | 水酸化ナトリウム NaOH(1価)、水酸化カリウム KOH(1価)、水酸化カルシウム Ca(OH)₂(2価) | アンモニア NH₃(1価) |
- (4) 価数は1分子が出せる H⁺・OH⁻ の数、強弱は電離度の大小であり、両者は無関係である。酢酸は1価の弱酸、硫酸は2価の強酸、水酸化カルシウムは2価の強塩基である。OpenStax「Brønsted-Lowry Acids and Bases」
- (5) 電離度は「電離した分子数 ÷ 溶かした分子数」で0〜1の値をとる。強酸・強塩基は電離度がほぼ1、弱酸・弱塩基は1より十分小さい。弱酸・弱塩基の電離度は濃度が薄いほど大きくなる。OpenStax「Brønsted-Lowry Acids and Bases」
pH
- (6) pH は水素イオン濃度 [H⁺] の常用対数の符号を変えた値で、pH = −log₁₀[H⁺] である。25℃の水では [H⁺][OH⁻] = 1.0×10⁻¹⁴ (mol/L)² であり、pH + pOH = 14 となる。OpenStax「pH and pOH」
- (7) 25℃で pH = 7 が中性、pH < 7 が酸性、pH > 7 が塩基性である。pH が1小さくなると [H⁺] は10倍になる。OpenStax「pH and pOH」
例:0.01mol/L の塩酸(1価の強酸、電離度1)では [H⁺] = 1.0×10⁻² mol/L なので pH = 2 です。
危険物との関係
- (8) 第6類の硝酸は強酸かつ強い酸化性をもち、皮膚や多くの金属を侵す。ただし濃硝酸はアルミニウムや鉄の表面に不動態をつくるため、これらの金属容器で扱える。e-Gov「消防法 別表第一」
- (9) 第6類の過塩素酸は極めて強い酸で、可燃物と接触すると発火の危険がある。第6類は「可燃物との接触・混合、分解を促す物品との接近、過熱」を避ける。e-Gov「危険物の規制に関する政令 第25条第1項第6号」
- (10) 第4類第2石油類の酢酸は1価の弱酸だが、可燃性液体であり引火の危険がある。「弱酸だから安全」ではない。職場のあんぜんサイト「酢酸 SDS」
- (11) 第2類の鉄粉・金属粉・マグネシウムは、酸との接触で水素を発生するため、貯蔵・取扱いでは水と酸との接触を避けなければならない。e-Gov「危険物の規制に関する政令 第25条第1項第2号」
試験での頻出ポイント
- 価数と強弱は別。「2価だから強酸」は誤りです(炭酸は2価の弱酸)。
- 弱酸・弱塩基の電離度は、薄めるほど大きくなります。
- pH が1違うと [H⁺] は10倍違います。
- pH + pOH = 14(25℃)。
- 第6類は強い酸化性をもち、可燃物との接触を避けます。硝酸の不動態も定番です。
出典・参考
- OpenStax Brønsted-Lowry Acids and Bases
- OpenStax pH and pOH
- e-Gov法令検索 危険物の規制に関する政令