異性体
異性体とは、分子式が同じで、構造や立体的な配置が異なる化合物どうしのことです。分子式が同じでも構造が違えば性質は大きく異なります。「同位体」(原子の話)と混同しないでください。
定義
- (1) 異性体とは、分子式が同じで構造が異なる化合物どうしをいう。分子式が同じでも、沸点・引火点・水への溶けやすさなどの性質は異なることが多い。OpenStax「Hydrocarbons」
分類
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 構造異性体 | 原子のつながり方(結合の順序)が違う | エタノールとジメチルエーテル |
| ├ 連鎖異性体 | 炭素骨格の枝分かれが違う | ブタンとイソブタン |
| ├ 位置異性体 | 官能基や二重結合の位置が違う | 1-プロパノールと2-プロパノール |
| └ 官能基異性体 | 官能基の種類が違う | エタノール(アルコール)とジメチルエーテル(エーテル) |
| 立体異性体 | つながり方は同じで空間配置が違う | シス-2-ブテンとトランス-2-ブテン |
| ├ シス・トランス異性体(幾何異性体) | 二重結合まわりの配置が違う | マレイン酸とフマル酸 |
| └ 鏡像異性体(光学異性体) | 互いに鏡像の関係にある | 乳酸のD体とL体 |
- (2) 構造異性体は原子のつながり方が異なる異性体で、連鎖異性体・位置異性体・官能基異性体に分けられる。OpenStax「Hydrocarbons」
- (3) 立体異性体はつながり方が同じで空間配置が異なる異性体で、シス・トランス異性体(幾何異性体)と鏡像異性体(光学異性体)がある。OpenStax「Hydrocarbons」
代表例:C₂H₆O の2つの異性体
| エタノール | ジメチルエーテル | |
|---|---|---|
| 示性式 | C₂H₅OH | CH₃OCH₃ |
| 分子式 | C₂H₆O(共通) | C₂H₆O(共通) |
| 官能基 | ヒドロキシ基 −OH | エーテル結合 −O− |
| 常温での状態 | 液体 | 気体 |
| 沸点 | 78℃ | −24℃ |
| 水への溶解 | よく溶ける | 少し溶ける |
| 消防法上 | 第4類アルコール類 | 危険物には該当しない(高圧ガス) |
- (4) エタノールとジメチルエーテルはいずれも分子式 C₂H₆O の官能基異性体で、エタノールは常温で液体(沸点78℃)、ジメチルエーテルは常温で気体(沸点−24℃)と性質が大きく異なる。OpenStax「Alcohols and Ethers」
- (5) エタノールの沸点が高いのは、ヒドロキシ基により分子間で水素結合をつくるためである。ジメチルエーテルは水素結合をつくれない。OpenStax「Intermolecular Forces」
危険物との関係
- (6) 炭素数が増えるほど異性体の数は急激に増える。ブタン C₄H₁₀ には2種類(ブタン、イソブタン)、ペンタン C₅H₁₂ には3種類の構造異性体がある。OpenStax「Hydrocarbons」
- (7) 消防法の「アルコール類」は炭素数1〜3の飽和1価アルコール(変性アルコールを含む)と定義されるため、1-プロパノールと2-プロパノールはいずれもアルコール類に含まれる。位置異性体でも同じ品名になる。e-Gov「消防法 別表第一備考第10号」
- (8) キシレンにはオルト・メタ・パラの3つの位置異性体があり、いずれも第4類の危険物である。異性体ごとに融点・沸点が異なる。職場のあんぜんサイト「キシレン SDS」
同位体・同素体との違い
- (9) 同位体は原子、同素体は単体、異性体は化合物についての概念である。3つを取り違えさせる出題が定番である。OpenStax「Periodicity」
試験での頻出ポイント
- 異性体は分子式が同じで構造が違う化合物。同位体(原子)とは別物です。
- エタノールとジメチルエーテル(ともに C₂H₆O)が最頻出の例です。性質が大きく異なる点まで問われます。
- 「異性体は性質も同じ」は誤りです。
- 「同位体・同素体・異性体」の3語を区別できるようにします。
出典・参考
- OpenStax Hydrocarbons
- OpenStax Alcohols and Ethers
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト GHSモデルSDS