引火点
引火点とは、可燃性液体の表面に、点火源を近づけると引火するのに十分な濃度の蒸気を発生する最低の液温です。液体そのものが燃えるのではなく、液面上に発生した蒸気が空気と混ざって燃えます。
引火点は消防法上の危険物の分類(第4類の品名区分)を決める最重要の物性値で、試験でも最頻出です。
定義と意味
- (1) 引火点とは、可燃性液体が、その液面上に燃焼範囲の下限値に達する濃度の蒸気を発生する最低の液温をいう。液温が引火点に達していなければ、点火源があっても引火しない。総務省消防庁「危険物とは」
- (2) 引火点は「その液温での蒸気濃度が燃焼範囲の下限値とちょうど等しくなる温度」である。したがって引火点と燃焼範囲の下限は表裏一体の関係にある。消防試験研究センター「過去に出題された問題」
- (3) 引火点が低いほど低い温度で引火するため危険性が高い。ガソリン(−40℃以下)は常温で引火するが、灯油(40℃以上)は常温では引火しない。職場のあんぜんサイト「エタノール SDS」
消防法上の区分との関係
第4類の品名は、原則として引火点で区分されます。
| 品名 | 引火点による定義 |
|---|---|
| 特殊引火物 | 発火点100℃以下のもの、または引火点−20℃以下で沸点40℃以下のもの |
| 第1石油類 | 引火点21℃未満 |
| アルコール類 | (引火点ではなく、炭素数1〜3の飽和1価アルコールという組成で定義) |
| 第2石油類 | 引火点21℃以上70℃未満 |
| 第3石油類 | 引火点70℃以上200℃未満 |
| 第4石油類 | 引火点200℃以上250℃未満 |
| 動植物油類 | 引火点250℃未満 |
- (4) 第4類の品名は引火点で区分され、第1石油類が21℃未満、第2石油類が21℃以上70℃未満、第3石油類が70℃以上200℃未満、第4石油類が200℃以上250℃未満、動植物油類が250℃未満である。e-Gov「消防法 別表第一備考」
- (5) 引火点が100℃以上の第4類の危険物を「高引火点危険物」といい、製造所等の技術上の基準に特例(緩和)が設けられている。e-Gov「危険物の規制に関する政令 第9条第2項」
主な危険物の引火点
| 物質 | 引火点 |
|---|---|
| ジエチルエーテル | −45℃ |
| ガソリン | −40℃以下 |
| 二硫化炭素 | −30℃以下 |
| アセトアルデヒド | −38℃ |
| アセトン | −20℃ |
| ベンゼン | −11℃ |
| トルエン | 4℃ |
| メタノール | 11℃ |
| エタノール | 13℃ |
| 灯油 | 40℃以上 |
| 軽油 | 45℃以上 |
| 重油 | 60〜150℃ |
- (6) エタノールの引火点は13℃である。職場のあんぜんサイト「エタノール SDS」
- (7) ジエチルエーテルの引火点は−45℃で、第4類のなかでも特に低い。職場のあんぜんサイト「ジエチルエーテル SDS」
- (8) トルエンの引火点は4℃である。職場のあんぜんサイト「トルエン SDS」
引火点・燃焼点・発火点の関係
| 用語 | 意味 | 点火源 |
|---|---|---|
| 引火点 | 引火するのに十分な濃度の蒸気を発生する最低の液温 | 必要 |
| 燃焼点 | 引火後、燃焼が継続するのに十分な蒸気を発生する最低の液温 | 必要(着火後は不要) |
| 発火点 | 点火源なしに、加熱だけで自ら燃え出す最低温度 | 不要 |
- (9) 引火点は点火源があって引火する最低の液温、燃焼点は引火後に燃焼が継続する最低の液温、発火点は点火源なしで自ら燃え出す最低温度である。同一物質では通常、引火点 < 燃焼点 < 発火点の順に高くなる。総務省消防庁「危険物とは」
試験での頻出ポイント
- 「引火点=液体が燃え始める温度」ではありません。燃えるのは蒸気です。
- 引火点は「燃焼範囲の下限値の濃度の蒸気を発生する温度」。上限値ではありません。
- 引火点が低いほど危険。ガソリン(−40℃以下)は冬でも引火します。
- 引火点と発火点の大小関係が逆転する物質は原則としてありません(同一物質なら引火点<発火点)。ただし物質どうしを比べると、引火点が低い物質の発火点が必ずしも低いとは限りません(例:ガソリンは引火点−40℃以下・発火点約300℃、二硫化炭素は引火点−30℃以下・発火点90℃)。
- 引火点は圧力や測定法によって値が変わるため、公表値には測定条件が付きます。
出典・参考
- 総務省消防庁 危険物とは
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト GHSモデルSDS
- 一般財団法人消防試験研究センター 過去に出題された問題