粉末消火剤
粉末消火剤は、微細な粉末を放射して燃焼の連鎖反応を抑制(負触媒効果)し、あわせて分解で生じる二酸化炭素や水蒸気で窒息させる消火剤です。油火災・電気火災に強く、消火速度が速いのが特徴です。
消火の原理
- (1) 粉末消火剤の主な効果は、燃焼の連鎖反応を抑制する負触媒(抑制)効果である。加えて、熱分解で生じる二酸化炭素や水蒸気による窒息効果がある。総務省消防庁「危険物火災消火活動」
- (2) 消火速度が速く、瞬時に炎を消す能力に優れる。一方、冷却効果が小さいため再燃しやすく、放射後は視界低下や汚損も生じる。総務省消防庁「危険物火災消火活動」
粉末の種類
| 種類 | 主成分 | 色 | 適応火災 |
|---|---|---|---|
| ABC粉末(リン酸塩類等) | リン酸二水素アンモニウム NH₄H₂PO₄ | 淡紅色 | 普通(A)・油(B)・電気(C)のすべて |
| BC粉末(炭酸水素ナトリウム) | 炭酸水素ナトリウム NaHCO₃ | 白色 | 油(B)・電気(C) |
| BC粉末(炭酸水素カリウム) | 炭酸水素カリウム KHCO₃ | 紫色 | 油(B)・電気(C) |
| 金属火災用粉末(粉末(その他のもの)) | 塩化ナトリウム等 | ― | 金属火災 |
- (3) リン酸塩類等を主成分とするABC粉末は、普通火災・油火災・電気火災のすべてに適応する。一般に流通している消火器の多くがこの種類である。総務省消防庁「危険物火災消火活動」
- (4) 炭酸水素塩類を主成分とするBC粉末は油火災・電気火災に適応するが、普通火災には適応しない。e-Gov「危険物の規制に関する政令 別表第五」
- (5) 政令別表第五は粉末消火設備を「リン酸塩類等を使用するもの」「炭酸水素塩類等を使用するもの」「その他のもの」に区分する。その他のものが金属火災(第2類の鉄粉・金属粉・マグネシウム、第3類の禁水性物品)に適応する。e-Gov「危険物の規制に関する政令 別表第五」
法令上の位置づけ
- (6) 粉末消火設備は第3種の消火設備である。大型の粉末消火器は第4種、小型の粉末消火器は第5種となる。e-Gov「危険物の規制に関する政令 別表第五」
- (7) 移動タンク貯蔵所に備える自動車用消火器として、消火粉末を放射するもので充てん量3.5kg以上のものが規則第35条第2号に挙げられている。これを2個以上設ける。e-Gov「危険物の規制に関する規則 第35条第2号」
注意点
- (8) 冷却効果がほとんどないため、高温の物体が残っていると再燃するおそれがある。深部まで燃えている普通火災には、粉末だけでは不十分なことがある。総務省消防庁「危険物火災消火活動」
- (9) 放射すると視界が悪くなり、機器や食品を汚損する。精密機器のある場所では二酸化炭素消火設備などが選ばれることがある。総務省消防庁「危険物火災消火活動」
試験での頻出ポイント
- 主効果は抑制(負触媒)。窒息は補助、冷却はほとんどありません。
- ABC粉末(リン酸塩類等)は普通火災にも適応、BC粉末(炭酸水素塩類)は適応しない。この違いが最頻出です。
- 金属火災には「その他のもの」(金属火災用粉末)を使います。ABC粉末では対応できません。
- 粉末消火設備は第3種、大型消火器は第4種、小型消火器は第5種です。
- 冷却効果が小さいため再燃に注意が必要です。
出典・参考
- 総務省消防庁 危険物火災消火活動
- e-Gov法令検索 危険物の規制に関する政令 別表第五
- e-Gov法令検索 危険物の規制に関する規則 第35条