保安距離

最終更新日: 2026-08-27

保安距離

保安距離とは、製造所等で火災・爆発が起きたときに周囲の人と建物を守るため、製造所等の外壁(またはこれに相当する工作物の外側)から、住居・学校・病院などの保護対象物までに確保する距離です。製造所の標準基準は危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号に定められ、屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所・屋外貯蔵所は各条でその例によるものとされ、一般取扱所は政令第19条第1項で準用します。

ただし、危険物の種類・施設形態・特例基準によって、標準の保安距離がそのまま適用されない場合があります。まず標準基準を押さえ、その後に適用除外・緩和等の特例を区別するのが安全です。

「施設の外にある守るべき対象まで、どれだけ離すか」を決めるのが保安距離です。施設の周囲にあけておく空地は保有空地という別の制度なので、混同しないでください。

距離の測り方

製造所の標準的な保護対象物と保安距離

保護対象物確保する距離
住居の用に供する建築物その他の工作物(製造所の存する敷地と同一敷地内のものを除く)10m以上
学校、病院、劇場その他多数の人を収容する施設で総務省令で定めるもの30m以上
重要文化財・重要有形民俗文化財・史跡・重要な文化財に指定された建造物、旧重要美術品等保存法により重要美術品と認定された建造物50m以上
規則第12条第1項各号の高圧ガス等の施設(不活性ガスのみを貯蔵・取り扱うものを除く)原則20m以上
使用電圧が7,000Vを超え35,000V以下の特別高圧架空電線水平距離3m以上
使用電圧が35,000Vを超える特別高圧架空電線水平距離5m以上

「30m」に含まれる施設の範囲(規則第11条)

政令が「総務省令で定めるもの」と委任した先が規則第11条です。範囲を確定しておきます。

区分該当するもの収容人員の要件
学校幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校なし
病院医療法第1条の5第1項の病院なし
興行場等劇場、映画館、演芸場、公会堂その他これらに類する施設300人以上収容できるもの
福祉施設等児童福祉施設、身体障害者社会参加支援施設、保護施設(授産施設・宿所提供施設を除く)、老人福祉施設・有料老人ホーム、母子・父子福祉施設、障害者職業能力開発校、特定民間施設、介護老人保健施設・介護医療院、障害福祉サービス事業(生活介護・自立訓練・就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援)の用に供する施設、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム20人以上収容できるもの
  • (9) 30mの対象となる「学校」は幼稚園から高等専門学校までで、大学・短期大学・専修学校・各種学校は規則第11条第1号の列挙に含まれない。また同条第2号が対象とするのは医療法上の「病院」であり、診療所は含まれない。e-Gov「危険物の規制に関する規則 第11条」

標準基準で保安距離を要求する施設区分

政令の標準基準では、次の5施設区分で第9条第1項第1号の保安距離が直接規定されるか、その例による・準用する形になっています。

施設根拠
製造所政令第9条第1項第1号
屋内貯蔵所政令第10条第1項第1号(製造所の例による)
屋外タンク貯蔵所政令第11条第1項第1号(製造所の例による)
屋外貯蔵所政令第16条第1項第1号(製造所の例による)
一般取扱所政令第19条第1項(第9条を準用)

ここでいう「5施設区分」は標準基準の整理です。「該当区分なら例外なく必ず10m・20m・30m・50m等をそのまま適用する」という意味ではありません。たとえば、吹付塗装作業や洗浄作業を専ら行う一定の一般取扱所は、規則第28条の55第2項・第28条の55の2第2項等の特例要件を満たすと、政令第19条第1項で準用する第9条第1項第1号が適用されません。e-Gov「危険物の規制に関する規則 第28条の55・第28条の55の2」

一方、次の施設区分には、政令第9条第1項第1号型の保安距離は標準基準として置かれていません。

施設標準基準上の扱い
屋内タンク貯蔵所第9条第1項第1号型の保安距離なし
地下タンク貯蔵所第9条第1項第1号型の保安距離なし
簡易タンク貯蔵所第9条第1項第1号型の保安距離なし
移動タンク貯蔵所第9条第1項第1号型の保安距離なし
給油取扱所第9条第1項第1号型の保安距離なし
販売取扱所(第一種・第二種)第9条第1項第1号型の保安距離なし
移送取扱所第9条第1項第1号型の保安距離なし。ただし地上に設置する配管について、規則第28条の16第2号が住宅・学校・病院・鉄道等に対する告示所定の水平距離を要求する

緩和できる場合とできない場合

試験での頻出ポイント

  • 製造所の標準基準では、住居10m・多数収容施設30m・重要文化財等50m、高圧ガス等20m、特別高圧架空電線3m/5mを対応させます。高圧ガス等20mには「不活性ガスのみ」の施設を除く条件があることまで押さえます。
  • 「保安距離が必要な施設はどれか」という標準基準の問いでは、地下タンク貯蔵所・移動タンク貯蔵所・給油取扱所を混ぜた選択肢に注意します。まず5施設区分を押さえ、特例を問う設問では一般取扱所等の適用除外を別に判断します。
  • 「大学は規則第11条の学校に含まれるか」「同一敷地内の住居にも10m必要か」は、いずれも含まれない/不要です。
  • 距離の起点を「敷地境界線」「タンクの中心」と入れ替えた選択肢はひっかけです。政令第9条第1項第1号の起点は外壁又はこれに相当する工作物の外側です。
  • 保安距離と保有空地を入れ替えた選択肢もひっかけです。「距離=外の保護対象物まで」「空地=施設の周囲にあける」と区別しましょう。

出典・参考

保安距離に関する問題